阿弥陀さまは、極楽浄土に生れた者に「過去世(かこせ)を知る能力を得て、計り知れないほどの遠い過去のことを知ることができる」ようにしてくださいます。これを「宿命智通願(しゅくみょうちつうがん)」と言います。
仏教では、私たちは幾度もの生涯を繰り返している、と説きます。つまり、この世で生を授かったのは今だけではなく、その前も、その前もあるというのです。それは「無始より」と言いまして、始めがいつかわからないほどなのです。それを、お釈迦さまは覚りの境地に達した時、全ての過去を知ることができました。本来、私たちもお釈迦さまのようにできれば、過去を思いだし「本当の始め」を知ることができるのですが、そう簡単にはいきません。そこで、お釈迦さまは「阿弥陀仏」の存在を私たちに明らかにしてくださったのです。「阿弥陀仏を信じて、極楽浄土に生まれよ。そこは、覚りの境地に容易く到達する理想的な環境が整っている」とお示しくださったのです。私たちが極楽浄土に生まれられると、お釈迦さまと同じように覚りを得られるのです。そして、そのためにはお念仏が必要なのです。なぜなら、お念仏を申す者を阿弥陀さまは極楽浄土に救う対象としているからです。
誰しも「本当」のルーツがあります。残念ながら、今の私たちにはそれを明らかにすることは難しいです。そんな私たちでも極楽浄土に生れられた時、初めて本当のルーツを知り、関わった全ての人を知ることができるのです。
合掌