私にとって仏教とは「自分を見つめなおすこと」だと思っています。実際、お釈迦さまは、たくさんの経験から自分を見つめ直し、お覚りを得られました。2500年経った今でもその教えはたくさん残っています。
お檀家さんで九十歳を超える奥さまが「和尚さん、少欲知足の精神ですね」と私に仰います。今でも十分にお元気な方ですが、それでも若い頃と比べて、できなくなったことが増えてきたことに悲しんでおられました。正座ができなくなったことや一人で遠出ができなくなったことなどです。そんな八十代の頃「少欲知足」の仏教の教えに出会われました。少欲知足とは、欲を抑えて今あるものに満足する、という意味です。奥さまは、大きな病気やケガもなく毎日を過ごせていることを振り返り、改めて有難さと幸せを感じられたそうです。
私たちは、知足を見ずに不足を見がちです。足らないものばかりを見てしまうと、辛く悲しくなり、ついには不平不満がでます。少欲がいつのまにか強欲になると、満たされない欲はいずれ私たち自身の心を苦しめることになります。私たちの欲はとめどなく現れます。現状の足りていることを見直せば、自ずと欲を抑えられるのです。
強欲ではなく少欲を、不足ではなく知足を、私たちが自分自身を見直すことができれば、不平不満も少なくなり、心は満たされ穏やかな生活へと変わっていくのではないでしょうか。少欲知足の精神、すぐになれない私ですが心に刻みたいです。
合掌