南無阿弥陀仏とは「極楽に導いてください阿弥陀様」と救済を願う言葉です。お念仏を称えることで、阿弥陀様がいつでもどこにいても私たちを見守ってくださるのです。それは、亡き方々も同じです。
三重県にお住いのある奥様がいらっしゃいます。10年ほど前にご主人は極楽へと往生されましたが、その一周忌の時でした。読経を終えた後、奥様は笑顔で私にこうおっしゃいました。
「いつも主人が私を見守ってくれているんです。すぐそばに居ると感じられるんです。寝坊しそうになったら主人が『早く起きや』と声をかけてくれるんです。郵便局に行こうと思って外に出たらちょうどタクシーが来るんです。生前主人は、おっちょこちょいの私をすごく心配していました。だから、私から目が離せないのでしょうね。お仏壇の前で手を合わせて南無阿弥陀仏と称えながら『いつもありがとうね。絶対にそっち行くからね。だからいつか迎えに来てね。でも今は来なくていいよ。毎日楽しいから』と伝えているんです」
それから、お参りに伺うたびにご主人の話で盛り上がります。いつか来る再会を願って、お念仏を称えながら今を楽しんでおられます。
極楽はここから西の彼方、果てしなく遠い所に存在します。見えませんし、簡単に行き来することができません。しかし、南無阿弥陀仏という言葉が私たちと極楽の距離を縮めてくれるのです。そして、極楽浄土の住人との距離も縮めてくれるのです。