92歳で詩作された柴田トヨさんの「くじけないで」という詩に、
『陽射しやそよ風はえこひいきしない 夢は平等に見られるのよ』
という一節があります。自分が不幸だと溜息をつかないで、私も辛いことがあったけれど生きていてよかった、と綴っておられます。
柴田さんは、101歳の生涯を終えるまで、決して幸せ一杯の人生を歩まれたわけではありませんでした。幼い頃は奉公先でいじめに遭い、戦争を体験し、最初の結婚は半年で離婚。何度も死にたいと思われたそうですが、90歳を過ぎて、詩作に出会い気づかれたそうです。辛い事や悲しい事があっても、家族や知人など多くの方の愛情に支えられて、今の自分があるということに。そんな柴田さんの夢は、自分の詩集が、世界中の人に読んでもらう事でした。
幸不幸は人の価値観によって違います。私は、『陽射しやそよ風はえこひいき』せず、平等に与えられていて、『夢は平等に見られる』からこそ、前を向いて欲しい、と受け取っています。
浄土宗のみ教えは、誰もが実現可能な夢のみ教えです。阿弥陀さまは、実現可能な手だてをご用意くださったのです。極楽に想いを馳せて、お念仏を申せば、誰でも阿弥陀さまから平等にお慈悲を頂き、極楽に往けるのです。
寒くて厳しい雪の下に、春を待つ新しい生命があるように、私たちもいずれ生まれ変わる日がやってきます。次の世界で極楽に生まれる事を願って、日々お念仏を申し、その時まで、「くじけないで」生きていきたいものです。
合掌